「この歌い方がすごい!大賞」を勝手に決めたので発表する
歌詞が好きな曲。メロディが好きな曲。思い出に残ってる曲。一口に「お気に入りの曲」といっても、その好きな理由は様々だ。
時に私は「この曲のこのフレーズの歌い方が滅茶苦茶ツボ!」と感じることがある。今回は、そんな歌い方が素晴らしい4曲を「この歌い方がすごい!大賞」として紹介したい。大賞と言いつつ4つあるじゃねーか!というツッコミはガン無視して強行突破。
(YouTubeに公式MVがある曲はそのリンクを、ない曲はiTunesのリンクを記載)
ドキュメント2000〜the sweetest day of my life〜/スガシカオ
「みんなが見てる…」
https://itunes.apple.com/jp/album/%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%882000-the-sweetest-day-of-my-life/1124773433?i=1124773520&uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog
ドキュメント2000 ~the sweetest day of my life~ スガシカオ - 歌詞タイム
友人の結婚式で歌を披露することになった主人公が、あーでもないこーでもないと悩む曲。結婚ソングらしく多幸感に溢れた曲調と、終始うだつが上がらない歌詞のギャップがなんとも面白い。
歌い方すごいポイント、略して歌すごポイントは大サビ直前。式当日、ついに自分の出番が回ってきた。司会の紹介も終わり、さあいよいよ演奏だ!という状況下での
「みんなが見てる…」
ここの、ほんっっっとうに情けない声色が滅茶苦茶良い。何が良いって、込められてる情報量の多さ。
「あ〜〜来ちゃったよ〜とうとう来ちゃったよ〜〜嫌だ〜帰りたい〜〜こういうの僕苦手なんだよほんと〜〜でも今更後には引けないしな〜〜あ〜上手く歌えるかな〜〜二人の晴れの舞台台無しにしちゃったらどうしよう〜〜うわ〜みんなこっち見てるじゃんやめてくれ〜〜頼むからそんな視線向けないでくれ〜〜心臓が痛い〜〜吐きそう〜〜」
恐ろしいことに、たった7文字でこれだけの感情が伝わってくる。スガシカオは表現力の化け物か何かか。
「正義の味方」や「たとえば朝のバス停で」をはじめ、物語性に富んだ楽曲を数多く生み出しているスガシカオ。その中でも、特にこの「ドキュメント2000」は、明快なストーリーと主人公のキャラクターが見事に描写されている。まるで、短編小説を読んでいるかのような趣を感じることができる一曲だ。
メロウ/椎名林檎
「そうだろう?」
狂気と危うさ全開な楽曲。唸るようなサウンドと、歌詞の中に散りばめられた「ナイフ」「赤く染めた」といった不穏なワードが特徴的。
中でも耳に残るのは、曲中で4回登場する以下のフレーズ。
お前が僕よりイッちゃっているのだ
狂っている そうだろう?
この「そうだろう?」という問いかけ、実は3回目だけ明らかに歌い方が異なるのだ。
他の部分は気怠さの中に激情が滲むような歌い方なのに対し、3回目はどこか恍惚とした印象を受ける。まるで、何かを成し遂げて満足感と安心感に浸っているみたいな。この部分があることによって、一層世界観に深みが出ていると思う。
メロウの主人公である「僕」、全体通して鬼気迫ったイメージが強いのだけど、ここだけは純粋な笑顔を浮かべているのが想像できる。果たしてその理由が純粋なのかどうかは別として……
余談だが、曲全体に対する私の解釈はこんな感じ(presented by いらすとや)。
「社会なんてクソ食らえ!一緒に夢を追いかけようぜ!」って約束したにも関わらず、裏切って別の道を選んだかつての仲間に報復する曲……だと思うと、なかなか楽しい。想像が広がる楽曲です。
クレイジークレイジー (M@STER VERSION)/一ノ瀬志希 (CV: 藍原ことみ) & 宮本フレデリカ (CV: 髙野麻美)
「泣いちゃってるんだよ」
クレイジークレイジー (M@STER VERSION) / 一ノ瀬志希 (CV: 藍原ことみ) & 宮本フレデリカ (CV: 髙野麻美) の歌詞 (2757882) - プチリリ
ここの歌すごポイントは、絶妙な声の潤み具合。嗚咽混じりのあからさまな泣き声ではなく、決壊寸前の状態で必死に堪えよう・堰き止めようとしているような声色に惹き込まれる。
しかも、ここからの流れがまた凄い。このフレーズの直後、微かにスッ、と息を吸う音が入るのだ。それから、「音の洪水」とでも表現したくなる怒涛の間奏に突入する。一連の構成が非常に巧みで、初めて聞いたとき(ああ、歌詞であれこれ述べなくても感情ってこんなに伝わるのか……)と驚愕したのを覚えている。
個人的に、デレステ実装曲の中で一、二を争うくらい好きな楽曲。未プレイの方も、是非一度聴いてみてほしい。
ZION TOWN/the band apart
「悪いことしようぜ」
ZION TOWN / the band apart の歌詞 (2629783) - プチリリ
私がバンアパにハマったきっかけの楽曲。吹き抜ける夏風のような爽快感溢れるイントロに、初っ端からグッと惹き込まれる。
そんな軽やかなメロディに乗せて歌われる、少しドキッとするこの歌詞。ここの悪戯っぽく誘うような歌い方には、疲れた大人をたちまち童心に帰らせてしまう魔力がある。
「寄り道して帰ろうぜ」「1限サボっちゃおうぜ」誰しも身に覚えがある、ちょっとした禁忌破り。今となっては遠い過去の記憶だけど、たまには昔に戻って、面倒なことは忘れて、あの時みたいにありのままの自分で楽しんでもいいんじゃない?
慌ただしい日々の中でつい忘れてしまいそうになる感情を、たった一つのフレーズが思い出させてくれる。新生活が始まるこの時期に、ぴったりな楽曲だ。
もしこの曲でthe band apartに興味が出たら、続けて「Eric.W」「coral reef」「ピルグリム」と聴いてみるのがオススメ。個人的最強バンアパ入門コース。
以上4曲。こうやって文章化すると、たったワンフレーズで人の心を掴むアーティストの凄さをしみじみと実感することができた。せっかくなので、これを機に他の曲も歌い方に注目して聴き直してみようと思う。
いやあ、音楽って良い文化だなあ(結論)。