午前3時のおやつ

I'm not meshitero.

自分は死神なんじゃないかと思う瞬間について 或いはとあるサイトへの追憶

私が好きになったものは、みんな遠くへ行ってしまう。

そんなセカイ系ラノベのヒロインみたいなことを考えしまう瞬間がある。関係ないけど、セカイ系ってもう死語に近いんだろうか。

例えば、バンドにハマってアルバムを買ってきたら数日後に解散が発表された時。

例えば、面白い漫画を発見してハイテンションになっていたら、即打ち切りになった時。

例えば、あまりの美味しさに感動して「この夏はこれを主食にする!」と心に決めたアイスが、翌日にはコンビニから消えていた時。

とある、1つの疑念が浮かぶのである。

「ワイ、もしかして死神か?」

冷静に考えれば、単なる偶然に過ぎない。自分に何かの運命を捻じ曲げる力があるだなんて、本気で信じているわけじゃない。でも、生まれてこの方、あまりにもこういうことが多い。多すぎる。なので、どうしても「また愛するものの命を刈り取ってしまった……」と自意識過剰に嘆くのをやめられないのだ。

 

この悲哀を特にひしひしと感じていたのは、中学・高校生の頃。

当時は、所謂「個人サイト全盛期」。

御多分に洩れず、私も様々なサイトに入り浸っており、そこで連載されているオリジナル漫画や小説を毎日楽しんでいた。

しかし、何故か私が閲覧するようになった途端、順調だった更新が悉く滞る。場合によっては、サイト自体が閉鎖されてしまう。一体、何度「404」「ホームページが存在しません」の文字列を見て涙を飲んだことか。管理人さんを忙殺する現実という名の荒波を呪う一方で、己の不運さとタイミングの悪さに頭を抱える日々だった。

 

そんな悲しき思い出の多い個人サイトの中でも、一際記憶に刻まれているサイトがある。

メインコンテンツは学園もののオリジナル小説で、基本週1,2回くらいのペースで更新されていた覚えがある。今でも、このサイトを見つけた時の衝撃と高揚感は忘れられない。それくらい、自分の趣味嗜好にガッツリ嵌った作品だった。起床後と就寝前に必ずサイトを訪れ、更新の有無をチェックするのが、当時の日課と化していた。

コンスタントな更新が急に途絶えたのは、読者になって半年ほど経った頃。

何日経っても、更新履歴のページが「○月□日 第×章第△話公開しました!」から一向に変わらない。最初はただ単に管理人さんが多忙なだけかと思っていたが、そのまま1ヶ月が過ぎた。サイトと並行して運営されていたブログの方にも、特に更新に関するお知らせはなかった。

管理人さん大学生って言ってたし、この時期は色々大変なのかな。まあ、待ってればいつかは更新されるよね。不安を感じつつ、出来るだけポジティブに考えていた。しかし、あっという間に1年が過ぎた。全く音沙汰はない。さらに1年経った。日付は止まったまま。ここまで来ると、流石に諦めつつあった。ああ、きっと、この物語の続きが紡がれることはないのだろう。

更新が止まった理由はわからない。執筆に割く時間がとれなくなったのかもしれないし、スランプになってしまったのかもしれない。或いは、あまり考えたくはないけど、何か不幸があったのかもしれない。結局、一ファンに真相を知る術はなかった。

 

高校卒業と同時に、ガラケーからスマホに機種変した。その頃には、個人サイトをチェックする習慣もほとんど薄れていた。だけど、あのサイトだけはどうにも心に引っかかっていて、スマホのブックマークにも登録した。そうしないと、あの場所に繋がる道が完全に断たれてしまう気がしたからだ。

それからさらに年月が経った現在でも、ふとした瞬間にサイトのことを思い出す。もしかしたら、何か動きがあるんじゃないか。一縷の望みを抱いて、ずっと消せずにいるブックマークを開く。そして、大量のバナー広告と 8年前の日付が載っているトップページを確認して、そっと立ち去る。

落胆と同時に、これでいいんだという気持ちもある。良くも悪くも昔に比べて目が肥えてしまった今、たとえ本当にあのサイトが復活したとしても、当時と同じ熱量で楽しむことはできないだろう。そんな、寂しい確信がある。

たまに思い出して、覗きに行って、更新履歴を確認して、帰る。多分、これから先も性懲りも無く同じことを繰り返す。

 

これじゃ、死神じゃなくて地縛霊だ。